オーディオ機器の接地

フレーム接地とシグナルGND接地の2種がある。混同しないように注意。
 

フレーム接地の目的と効果

安全対策
 家電のアースといえばこれ。オーディオ機器も家電の一種なので、普通はこれを指す。 フレーム接地は一般に機器のアース端子、または3P電源プラグのアース端子から、コンセントのアース端子もしくは、専用の地中アース棒に接続する事で実施される。機器のアース端子は機器の筐体に接続されている。
 フレームを接地する目的は、漏電時の感電防止。電源線が何らかの事故でショートして、機器の筐体に電流が流れた場合、これがいわゆる「漏電」で、機器に触ると人体を通して大地へと電流が流れ「感電」する。この時筐体が接地されていればショートした時点で電流はアース線を通って大地へと流れる。この状態になると配電盤の漏電プレーカー漏電を検知し、ブレーカーが落ちる。漏電プレーカーが落ちなかった場合でも、アース線は人体より抵抗値が低いので、人体を通る電流はかなり減ることになり、安全性が高まる。

ノイズシールド
 フレーム接地には安全対策に加え、副産物とも言える効果がある。オーディオ機器ににおけるフレーム接地の意味は、シールド効果によるノイズ軽減と言う側面が大きいと思われる。
 オーディオ機器の筐体は導電体であることがほとんどだが、電気回路を導電体で囲み、接地することで静電誘導によるノイズ発生を防ぐことが出来る。囲むだけでも効果はあるが、接地した場合に比べ効果は薄い。機器自身が発生するノイズ源を筐体外に出すのを防ぐことで、他の機器への影響を低減し、また、他の機器が発生するノイズ源を筐体内に入れることを防ぐ事で、ノイズの発生を低減する。
 ノイズ源はいわゆる電磁波と呼ばれる物。人体に有害かどうかはいまだハッキリしていないが、静電誘導および磁気誘導を引き起こすため、電気回路に対して有害であることは間違いない。

シグナルGND接地

電気回路を流れる電流の戻り側(-側)をシグナルGNDと呼ぶ。常に安定した電位を保つことが望ましい。シグナルGNDの接地は電位を安定させる目的で行われる。
オーディオ機器においては、複数の機器を接続して使用するが、各機器を接続する信号線(インターコネクトケーブル)によって、シグナルGNDは接続される。
各機器すべてのシグナルGNDを個別に接地すると、アースループが形成され、動作に不具合を起こしたり、ノイズの原因となる可能性がある。
意図的に接地を行わなくとも、機器によってはシグナルGNDが筐体に接続されている場合があり、このような機器では、フレーム接地によって、同時にシグナルGNDも接地されている事になる。このような機器がオーディオシステムに複数ある場合は、やはりアースループが形成されており、不具合やノイズの原因となる可能性がある。
インターコネクトによりシグナルGNDが共通化されている複数の機器において、アースループを避けるためには、一つだけの機器からシグナルGNDを接地する必要があるが、これにより各機器のシグナルGNDは共通インピーダンスとなり、やはり不具合やノイズの原因となる可能性がある。

オーディオ機器に置けるシグナルGNDの接地は、アースループと共通インピーダンスという、いわば矛盾した問題を抱えている。完全に双方を解決することはほぼ不可能なので、最適の方法は試行錯誤によって見つけるしかないと思われる。

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