今年はあまりに読書しとらん!と、感じまして読書。
井上靖「しろばんば」
なんで?井上靖?しかも「しろばんば」???と自分でも不思議なんですが、去年か一昨年の新聞記事で、とある作家が熱くこの作品を推していまして(読んでおかなきゃならん作品)として脳にインプットされてしまったからなのでした。
本も凄いヤツを古本屋で見つけちゃったのよ〜〜。
21世紀版(21世紀版ですよッ!) 少年少女日本文学館16 講談社(文学全集の16巻。結構凄いセレクションで20巻は井上ひさし、野坂昭如、三浦哲郎、村上春樹)
そして!読みたくないホドの丁寧すぎる注釈とルビ。 図入り解説。ランプ、土蔵、土間、袴、藁草履、障子・・・・、21世紀の少年少女達にとって、大正・昭和の生活自体が未知で無知なので、このような事になったのだと思われます。
うわぁぁぁーうっとうしいわーーー!と、ブン投げたくなる本です。
井上靖の自伝的小説「しろばんば」。
私は語感から勝手に白いババアの話しだと思っていましたが、当たらずとも遠からずでしたよ。
主人公・洪作は曾祖父の妾・おぬい婆さんと土蔵で暮らしてます。 ちゃんと両親はいますが、めちゃくちゃややっこしい家族構成。
そしてタイトルのしろばんばは実際(白い老婆)という意味で、雪虫(粉虫)の事でした。
で、この小説、子供が読むものなのか?読んでわかるのか? 皮肉満載の妾と本妻のやりとりや、本妻の子供の子供は9人きょうだいで本妻側の家族は曾爺ちゃんの妾と暮らしている洪作を何かと虐める。(9人兄弟の長女が洪作の母親。9番目の娘は洪作と同じ年だが叔母にあたる) 殺人事件が起こらないだけで、ほぼ横溝正史の世界。
取るに足らないどーでもいいド田舎の日常を切り取っただけなのに、もの凄く面白い!
それは10歳足らずの主人公・洪作とおぬい婆さんが、親族に対して激しく気を遣い、時には本心をぶちまける。会話のやり取りがたまらない。読ませてしまう。
そう、血のつながりで言えば、おぬい婆さんは孤立無援で味方は誰一人といない、全員敵。一緒に暮らす洪作は子供ながらにそれをわかっていて、おぬい婆さんに味方する。
一番気を遣う立ち位置にいる子供。
私もバアチャンに育てられたので、共感する所が多い。 それもあって、面白さと深さ倍増で読んでいるのかもしれません。
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